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zoom RSS 書評:フラット化する世界(上・下)

<<   作成日時 : 2006/07/05 01:01   >>

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【Executive Summary】 壁も境も無い世界
前作(1999)「レクサスとオリーブの木」ではグローバル化する力とそれが世界に及ぼす影響について考察しているが、本書ではその考察を更に進めている。11.9のベルリンの壁崩壊以降、IT(特にインターネットとブロードバンドの普及)によって世界中の壁が取り払われ社会活動や経済活動の境がなくなりつつある。筆者はアメリカ人なので、本書ではアメリカがいかに覇権を維持し、世界の規範となるべきかを述べているが、常にアメリカを追随する日本にとって参考にすべき点は多い。

【Points to Note】 目次+αで本書の中身をご紹介
序文
第1部 世界はいかにフラット化したか
第1章 われわれが眠っているあいだに
グローバリゼーションは3.0に突入した。グローバリゼーション1.0は主に1492年から1800年頃まで国のグローバル化を、2.0は1800年ごろから2000年ごろまで企業のグローバル化を中心に進んだ。3.0は個人のグローバル化が欧米以外でも進んでいる。フラットな世界では誰でも競争に加わることができる。

第2章 世界をフラット化した10の力
  フラット化の要因1 ベルリンの壁の崩壊と、創造性の新時代
  フラット化の要因2 インターネットの普及と、接続の新時代
  フラット化の要因3 共同作業を可能にした新しいソフトウェア
  フラット化の要因4 アップローディング:コミュニティの力を利用する
  フラット化の要因5 アウトソーシング:Y2Kとインドの目覚め
  フラット化の要因6 オフショアリング:中国のWTO加盟
  フラット化の要因7 サプライチェーン:ウォルマートはなぜ強いのか
  フラット化の要因8 インソーシング:UPSの新しいビジネス
  フラット化の要因9 インフォーミング:知りたいことはグーグルに聞け
  フラット化の要因10 ステロイド:新テクノロジーがさらに加速する

第3章 三重の集束
第一の集束:10のフラット化の要因が結束し新たな競技場ができた
第二の集束:ビジネス手法とスキル、プロセスの水平化によって新たなプロセスができた
第三の集束:新たな競技場と新たなプロセスに新たな人々が参加できるようになった

第4章 大規模な整理
世界は垂直的なCommand&Controlシステムから、水平なConnect&Collaborateシステムへ移行した。その結果、従来丸い地球で行われてきた仕組み(国家や政府など)がフラットな世界向けに調整・整理される必要がでてきた。

第2部 アメリカとフラット化する世界
第5章 アメリカと自由貿易――リカードはいまも正しいか? (以上 上巻)
リカードの理論「それぞれの国が比較的にコストで優位にある生産物に特化して、他国が同様に特化した商品と貿易を行えば、全体として利益が生じ、双方の国の総収入レベルも上がる」結果、大多数のアメリカ人の暮らしは良くなるだろうが職を失う人も出るが、それに目くじら立ててはいけない。

第6章 無敵の民――新しいミドルクラスの仕事        (以下 下巻)
「グローバリゼーションは産業のグローバル化から個人のグローバル化に移った」。もはや、個人の競争相手は隣の席のアイツではない。新ミドルクラスに必要なスキルは、@偉大な共同作業者・まとめ役、A偉大な合成役、B偉大な説明役、C偉大なテコ入れ役、D偉大な適応者、Eグリーン・ピープル、F熱心なパーソナライザー、G偉大なローカライザー。そして「赤の女王」の話を忘れないこと。

第7章 理想の才能を求めて――教育と競争の問題
「理想の教育」とは一定の技量と姿勢を身に付けることだった。@学ぶ方法を学ぶ、A熱意と好奇心を持つ、B人とうまくやる、C右脳を進化させる。文化的教養を身に付け得意な分野をミックスすることで、差別化を図ることができる。

第8章 静かな危機――科学教育にひそむ恥ずかしい秘密
現在のアメリカは3代目が財産を食いつぶす裕福な一家だ。IT企業のにわか景気は汗水たらして働かなくても金持ちになれるという錯覚を多くの人に植え付けた。苦労して理工系の学位をとるのはばかみたいだ。アメリカには6つの欠陥がある。アメリカを尻目にインドや中国はせっせとアメリカのお株を奪っている。

第9章 これはテストではない
アメリカがいまなすべきことはなにか。筆者の理想は「思いやりのあるフラット主義」だ。

第3部  発展途上国とフラット化する世界
第10章 メキシコの守護聖人の嘆き
メキシコは対米輸出の減少に気が付きながらも何も手を打たず、中国に負けてしまった。

第4部 企業とフラット化する世界
第11章 企業はどう対処しているか
ルールその1:世界がフラット化し、ぺしゃんこにつぶされそうだと思ったら、スコップを持って内面を掘り起こせ。壁を築こうとするな。
ルールその2:小は大を演じるべし・・・・・・大物ぶるのが、フラットな世界で小企業が繁栄する一つの方法だ。小が大を演じる秘訣は、より遠く、より速く、より深いところを目指し、共同作業の新しいツールを速やかに利用することだ。
ルールその3:大は小を演じるべし・・・・・・顧客が大物ぶるように仕向け、自分は小物として振舞うすべを身に付けるのが、大企業がフラットな世界で繁栄する一つの方法だ。
ルールその4:優良企業は優良共同作業者である。フラットな世界では、多くの事業が企業内・企業間の共同作業によって行われるようになる。バリュー創出の次の階層はきわめて複雑になるから、独力でそれをマスターできる会社や部・課はどこにもない。
ルールその5:フラットな世界では、定期的にX線検査を受け、結果を顧客に売り込むことで、優良企業が」健康体を維持する。
ルールその6:優良企業は、縮小するためではなく、勝つためにアウトソーシングする。それは速やかに早くイノベーションを行うためのアウトソーシングであり、大勢を解雇して金を節約するのが目的ではない。それによって成長し、シェアを伸ばし、いろいろな分野の専門家をより多く雇う。
ルールその7:アウトソーシングはベネディクト・アーノルズだけのものではない。理想主義者のものである。

第5部 地政学とフラット化する世界
第12章 フラットでない世界――銃と携帯電話の持込みは禁止です
ビン・ラディンのようにフラット化に乗り遅れた人々はフラット化への抵抗勢力になる。

第13章 ローカルのグローバル化――新しい文化大革命が始まる
フラット化は必ずしも文化の均質化をもたらさない。むしろローカルな文化を容易に世界に発信できるのだ。

第14章 デルの紛争回避理論――オールド・タイムvsカンバン方式
「紛争防止の黄金のM型アーチ理論:マクドナルドが出店している国同士は戦争をしたことが無い」は通用しなくなった。新たに、「デルの紛争回避理論:デルのサプライチェーンに組み込まれた国同士は双方がサプライチェーンの当事者であるかぎり戦争を起こすことは無い」を提案する。

結論 イマジネーション
第15章 2つの選択肢と人間の未来――11・9vs9・11
イマジネーションが今ほど大切である時代はない。想像はコモディティ化を阻止し、未来を創造する唯一のツールだ。

【コメント】 全米200万部突破のベストセラー
アメリカでベストセラーになっていると知って、早く日本語訳が出ないかと期待していた本である。かなりのボリュームがあり読み終えるのが大変だったが、苦労のした甲斐はあった。「World is flat」。世界は加速度的に小さく平たくなっている。6人を経れば世界中の人とつながる。鳥インフルエンザだけが他人事なわけではない。ITとインターネットの普及やさまざまな標準化などの要因が重なり、壁も境もない世界になった。輝く個人は自国だけでなく、世界に通用する人材でなければならなくなった。そして、誰も立ち止まることを許されない世界になった。立ち止まったら、たちどころに追い抜かれる。追い抜かれたら負ける。

これからの世界を読み解き、我々が何をすべきかを考えるヒントがたくさん示されている。個人的に不満が残った点は、ローカルがグローバルに展開するようになると筆者は言うが、アメリカ人であるせいか、文化や歴史の価値や重みをあまり評価していないのか、多く語っていない点だ。むしろ、利益や得などに価値を置いているように読めた。たしかに、グリーンやエコロジーがこれからの規範となると言ってはいるのだが。

グローバリゼーション3.0によって、世界全体がいままでより均質化していくことは間違いなく、その均質化は利益や得を重視する価値観が中心となっているのも恐らく間違いない。だれもがお金は無いよりもあるほうが良く、できればたくさんあるほうが良いと思っているはず。それがアメリカ主導で進んできた今の資本主義、自由主義の価値観だと思う。だが、それでは世界はますます小さく平たくなり、灰色の男たちが大手を振って活躍する場になっていく。

この本はあくまでアメリカ人の観点から書かれている。日本人として我々が補足することは多々あるはず。「品格」でも「癒し」でも良いが、今こそ、歴史に学び未来に「らしさ」をつなぐ努力をしなければならないのではないかと思う。

オススメ度 ★★★★★
2006年の世界はこんな風、というのが良く分かる。特に、フラット化の要因や、企業の対処法、新しいミドルクラスの仕事などは、仕事の役に立ちそう。読書の意欲のある方にオススメ。
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