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zoom RSS 3冊書評:宮部みゆき『英雄の書』毎日新聞社 2009年 +2

<<   作成日時 : 2009/05/13 12:36   >>

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一言要旨:物語を紡ぐということの責任をどう取るのか

英雄の書 上
毎日新聞社
宮部 みゆき

ユーザレビュー:
ロードオブザリング? ...
感情移入しづらい冒険 ...
まんねり物語宮部作品 ...
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英雄の書 下
毎日新聞社
宮部 みゆき

ユーザレビュー:
期待していただけに… ...
物語としては出来上が ...
宮部みゆきの物語観、 ...
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物語の達人、宮部みゆきの最新作は、ブレイブストーリードリームバスターなどのファンタジー系で、毎日新聞に連載されていたものに加筆修正を加えたものだ。新聞の読者層は広いためか、いわゆるYG(ヤングアダルト)層から大人まで楽しめる内容で、学校でのいじめを発端とする同級生の殺傷事件、その後の家族のあり方などに宮部氏お得意のファンタジーで迫っている。相変わらずのストーリーテリングで飽きさせず、エンターテインメント作品としては面白いが、宮部氏らしからず、いくつかの伏線が解決されないままになっており、それはエンディングで示唆されている(?)次作に持ち越しなのかとも思わせる。

注目ポイント:お兄ちゃんを救う使命にとりつかれた妹の運命やいかに!
・英雄物語の王道:セパレーション(出立)→イニシエーション(通過儀礼)→リターン(帰還)
 ・・・王道だけに、ベタな感じはぬぐえない。

・物語を紡ぐ者は、物語によって創造した世界に責任を取るべし
 ・・・ワールドモデル(物語の世界)とキャラクター(登場人物)は本が終わっても生き続けている。


個人的感想:お兄ちゃんはどこに?殺傷された同級生たちやその家族の運命は?
「英雄」を求める人々の思いが詰まった本を手にとってしまったばかりに、「英雄」に魅入られて、同級生の女子を助ける一方で、いじめの首謀者たちを殺傷してしまった兄。そして、そのことを知った妹と両親。物語の世界は、現実にありそうな家庭や学校を舞台にしている。が、本書が異様なのは、そんな陰惨な事件なのにも関わらず、学校の状況や友人関係、家族関係、マスコミの様子などについて余り書かれることなく、加害者の妹が兄を探すという冒険劇が描かれることである。折りしも、テレビでは『アイシテル』という同様の事件を題材にしたドラマが展開中である。こちらは現実世界でいかに加害者と被害者が事件を受け入れていくかということに焦点を当てているのに対し、宮部氏は、事件を起こした兄を事件に走らせた原因としての「英雄の書」を探し兄を探すという旅に出る妹について描く。

物語の構成・展開は『ブレイブストーリー』と酷似しているが、『ブレイブストーリー』では、父が浮気して家族崩壊した、という事件が主人公の出立のきっかけだったのに対して、『英雄の書』では、兄が同級生を殺傷して行方不明になった、という事件がきっかけとなっている。つまり、『ブレイブストーリー』では主人公は被害者であり家族以外に傷つくものはいないが、『英雄の書』では主人公は被害者であると同時に加害者の側におり、被害者家族、学校などの関係者など事件によって傷ついている人がいる、ということだ。そして何より、『英雄の書』の事件はマスコミに大いに取り上げられるような事件だ。なのに、宮部氏は被害者家族や学校の関係者、マスコミについて余り多くを割いていない。ワールドモデル・物語の世界にことの他気を配り多面・多層の世界を破綻なく仕上げる宮部氏の作品にしては、一面的な世界になっているように感じられる。あえて、加害者の妹を主人公に設定したのだろうと思われるし、他にも多くの作品においてワードモデルを創りキャラクターを生み出すという業(ごう)や性(さが)を背負った宮部氏のこれまでの作品に対するざんげの意味もあるのだろうと思われるが、一方的、あるいは表層的な感がいなめないのである。そこに、次作があるようなエンディング。こういう終わり方をするからには、責任を取って、さまざまな積み残しを解決して欲しい。

だが、本書は、物語のパターンとしては非常に分かりやすい構成である。ビジネスにおいても、こうしたストーリーを語ることが、人を巻き込む極意である。そして、宮部氏お得意のストーリーテリングの妙。伝わる言葉で伝える。簡単なようで簡単でない。大いに参考にしたい。

おススメ度:★★★☆☆
疲れた頭に、冒険心を取り戻すなら。ただ、感情移入しづらく、状況把握に若干手間取るかも、と言う点でマイナスして☆3つ。

+1
松岡正剛 『物語編集力』 ダイヤモンド社 2008年
スターウォーズは英雄物語の典型例であるが、『英雄の書』も同じ流れを汲む。

物語の基本形:セパレーション(出立)→イニシエーション(通過儀礼)→リターン(帰還)
物語の構成要素:ワールドモデル、キャラクター、シーン、ストーリー(スクリプト、プロット)、ナレーター
物語の特性:3を繰り返す 発端→経過→最終(序破急、守破離、起承転)

これらを会得することができれば、だれでも物語を書くことができる。それを実際に行っているのがイシス編集学校である。本書には、物語の基本をイシス編集学校の指導者がまとめたもの、そして、その応用として実際の受講生が書いた物語を掲載している。受講生の物語に対する講評と、物語の基本についてのまとめ部分だけでも十分読む価値がある。なぜなら、マーケティングではもちろんのこと、企業の戦略立案や事業展開においても役立てることができるからである。また、小説を読む際にもちょっと違った目線で読むことができるようになる。

おススメ度:★★★☆☆
物語について、そしてその編集方法について理解を深め、現実に活用したい方へ。受講生の物語の部分は冗長に感じるかもしれないので、二つマイナスの☆3つ。


物語編集力
ダイヤモンド社
松岡 正剛

ユーザレビュー:
作例集本書の大部分は ...
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+2
シュテファン・ツヴァイク 『ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像』 岩波書店 1979年
フランス革命の時代を生きたひねくれ政治家のジョゼフ・フーシェの自伝である。かのナポレオンさえも負かしたというフーシェであるが、いかに生き残るかという一点で波乱万丈の人生を生きた。自伝ではあるが、ワールドモデル、キャラクター、シーン、ストーリー(スクリプト、プロット)、ナレーターという物語の構成要素を意識すると、小説のようにも楽しめる。

おススメ度:★★★★★
フランス革命の裏にこんな小物が活躍していたのか、と驚かされる。人の生き様について考えさせられる。ツヴァイクの語り口は秀逸。



ジョゼフ・フーシェ―ある政治的人間の肖像 (岩波文庫 赤 437-4)
岩波書店
シュテファン・ツワイク

ユーザレビュー:
権力に魅入られた良心 ...
フランス革命の心理戦 ...
とにかく面白い伝記  ...
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